2.廃墟となった独身寮

外猫日記 ダイアリー

独身寮の住人が少しづつ減り始めて数年が経ち、完全にこの寮から人気が無くなった頃、以前にも増して猫たちが寮の裏手を歩いている姿をよく見かけるようになりました。

前からいた2匹以外にも何匹か違う猫がいる事も我が家の窓から見て取れました。ただこの頃は、不思議と猫たちがこの寮の敷地外へ出て歩き回るおうな姿を見る事は殆どありませんでした。

これまで寮の敷地の外へ出て来る事が無かった猫たちも、ある時期から隣にあるアパートのゴミ捨て場で頻繁に見かけるようになり、そのうちに、何匹もここに現れ奪い合いも始まりました。

このころからでしょうか、猫に対してとても関心を持ち始め、休日には窓の外から見える猫たちをそっと見るようになっていました。中でも当初見つけた黒猫と白黒の2匹の猫たちの足取りを細かく追って観察していましたが、この2匹はいつも一緒に行動することが多く黒猫のオスの方は、このゴミ捨て場を中心として歩き回っていました。

しかし、この寮が閉鎖となって一年が過ぎ、道を隔てた隣にあるほぼ同じ大きさの別の寮も気が付いた時には閉寮となり、この別の寮の方に居た猫たちもこのゴミ捨て場に集まるようになって、いつの間にかこの黒猫と白黒の猫は、私の目の前から姿を消していました。

今、思うとこの黒猫に名前を付けてやれなかったことが残念でなりません。大きくてゆっくりと歩き、白黒の猫の後を追い、歩き去る姿に何故か優しさを覚えていたのを思い出します。