1.独身寮の猫たち

外猫日記 ダイアリー

我が家の前には、建設されてから30年ほど経つ大手企業の独身寮がデンと構え建っていました。休日ともなると、車やバイクを洗っている若者の姿が見受けられ、裏手の入り口では寮のおばちゃん達が時折出て来て雑談していました。

駅から帰る途中、この寮の玄関わきを通り過ぎ裏手に回ったところでやっと我が家にたどり着きます。ここに住み始めてから約10年、生き物と云えば寮の周りに生い茂っている木々に群がる小鳥ぐらいしか目にする事はありませんでした。たまに、側溝を走り去る大きなドブ鼠を見て、猫でも居たら現れないだろうなと思いながら歩いていました。

最盛期には200人以上住んでいた寮の住人がだんだんと減っていき、おばちゃんの姿もたまにしか見る事が無くなってきた頃から、寮の裏手を通り過ぎたあたりで大きな黒猫と白黒の猫を頻繁に目にするようになりました。

夕方、おばちゃんが裏手の入り口から出て来て、何やらお椀の様なものを置きしばらくしてから猫たちが寄って餌を食べていました。